描き方と共感力
子どもの心に今、何が起こっているのか、
アートはたくさんの情報を与えてくれる。
3,4歳の子どもたちの絵をよーく見ていると、
手や腕の動きをただ楽しむぐじゃぐじゃ絵、
いわゆる「なぐり書き」から、
あるとき、コントロールされた
意図された絵へと変わる瞬間がある。
そのうち太い線、細い線、
大きな円、小さな円、
幾何学模様などを組み合わせ、
「お母さん」「電車」「カタツムリ」など
次第に外部のものを描くようになってくる。
この時期、心の方の成長も大きなステップを踏む。
クラスメイトを気づかったり、
いたわったり、
友達の喜ぶことをしたり、
「共感」のめばえ
のような瞬間がある。
私の経験だけからの考察だが、
線のコントロールと共感力は
とても密接に関係あるように思う。
共感力とは「他の人の気持ちを想像する能力」
5歳までには本当の意味で
共感できるようになると言われている。
自分の行動をコントロールする力が
発達した子どもほど、
共感力が増す、という研究もある。
(2007. Posner&Rothbart)
脳の発達とも大きく関係しているようだ。
自己制御力と共感の両方に関係している
皮質の前頭前野や前帯状皮質が十分発達していないと
他の人の気持ちを上手に理解できなかったり、
自分の行動をコントロールすることが難しいという。
(2007. Posner&Rothbart)
道具をコントロールして
自分の描きたいものを描く、
この簡単に思える一連の行動。
心や脳では
想像を超える
ミラクルなことが起きているようだ。
小さな変化を見て紐解いていく、
アートセラピストの感受性が問われる瞬間。