「人類の連想ゲーム」~The universal unconscious images in children’s drawings~
子どもたちは1歳ごろになると
誰から教わることもなく
自然と絵を描き始める
大きな弧、小さな弧、ぐるぐる渦巻き、
そしてそのうち
閉じた円(○)が上手に描け、
線がコントロールできるようになると、
その○に目鼻をつけ、
「人間」に、
放射線を描き
「太陽」に、
○はとても便利なツールへと変身する。
月、ボール、頭、おしり、
目、ダンゴ虫、時計、ビーズ、、、
連想ゲームのように、
一気にイメージが溢れ出す。
こういった○のイメージは
時代や民族、性別に関係なく
世界中の人間に「共通するイメージ」の一つ。
(心理学者のユングはこれを元型(archtype)と名付け、
詳しく研究した。芸術療法では、夢や絵を解釈するときに使われている。
もっと詳しく知りたい方は下のお薦め文献を。)
これらは大人になった今でも
無意識の深い深い部分
(集合的無意識)
に刻み込まれていて、
夢やイメージ、絵の中に
知らず知らず表れてくる。
人類の共通する型、
共通の源泉、
個人的な経験を超えたパターン
と考えたらいいだろう。
○の元型として代表的なものに
「太母」(great mother)
というのがある。
「生と死」を表すこの元型は
石器時代の壺、
古代遺跡でも太陽神を表現した曲線イメージの土偶、
自分の尾を間で円となったウロボス、
神話、おとぎ話や夢、絵、などによく見られる。
大人の私たちの絵の中にも
たくさん「○」を見るけることができる。
まさに子どもたちの「連想ゲーム」そのもの。
それが個人的に何を意味するのか、
それを紐解いていくのが
芸術療法(アートセラピー)の仕事の一つでもある。
無意識の素材が意識へと上がってくる。
しかも時代や文化、民族を超えたもの。
1,2歳の子どもたちの絵に初めて○がでてきた瞬間、
赤ちゃん時代が「終わり」幼児の時代が「始まり」
そして人間としての旅の始まるように思う。
「○かけたね」と小さな喜びを共有できたとき、
人類の歴史が凝縮された、宇宙の大きな流れを感じ、
じんわり感動を感じる。
アートセラピーで好きな瞬間でもある。
※「変容の象徴」 (1992/06) C.G.ユング著 筑摩書房
「元型論」(1999)C.G.ユング 紀伊國屋書店」
「ユング心理学入門」(1967) 河合隼雄著 岩波現代文庫